去る11月22~25日にバリ島ヌサ・ドゥアで行われていたユネスコの無形文化遺産委員会において、インドネシアのアチェ州の伝統舞踊「サマン・ダンス」が緊急保護リストに登録されました。
サマン・ダンスは13世紀に宗教的メッセージを伝えるため、アチェ内陸部に住むガヨ族を中心に継承されているアチェの代表的な伝統舞踊です。一切楽器を使わず、奇数の人数のダンサーが足を組むか膝をついて一列に並んで踊る大変ユニークで芸術性の高い伝統舞踊です。
ダンサー達はガヨ族の自然の象徴と価値観の伝統的なモチーフを刺繍した伝統的な民族衣装に身を包み、リーダーが宗教、助言、風習、風刺、ユーモアーやロマンティックな叙情詩を歌いながらダンサーの中央から踊りをリードします。
ダンサー達が手で自分の胸、腿、床を叩き、指を鳴らし、自分の体を前後左右に揺り動かし、頭を上下左右に捻ったり回転させたり、両手を動かし躍動的なリズムに合わせて踊ります。その動きは、スロー又はアップテンポ、エネルギッシュであり、時には同時に、又は、一人おきに交互に踊り、その一糸乱れぬシンクロした動きが特徴です。サマン・ダンスの動きは自然、環境やガヨ族の日常生活を表現しています。
サマン・ダンスは、村々の親交を深める為に村同士でお互いに招待しあってコンテストを催したり、お客様を歓待したり、国家行事、宗教的祭日に華を添える時にも踊られます。
これまで社会や政府がサマン・ダンスの保存に努力してきましたが、2004年のスマトラ沖地震による津波で壊滅的な被害を受けるなど、ショーの開催回数や次の世代への継承が徐々に縮小傾向にあり、このユニークな伝統舞踊の早急な保存努力が重要視されています。
現在では復興が進み平穏な日常が戻っているアチェを、このサマン・ダンスを通してもっと多くの皆さんに知っていただき、訪れていただくきっかけになればと期待されています。
尚、この他インドネシアの無形文化遺産に登録されているのは、伝統的影絵芝居ワヤン・クリッ、霊的意味をもつ伝統の短剣クリス、伝統的なろうけつ染めの技術バティックと、竹製楽器アンクルンがそれぞれ代表リストに登録されていますが、緊急保護リストに登録されたのは今年度のサマン・ダンスが初めてとなりました。
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バティックの実演 |
ワヤン・クリッ(影絵芝居) |
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